半導体

ミニマルスペース、ミニマルコスト、でも広がる可能性は無限大・ミニマルファブ~セミコンジャパン2018~

先週、セミコンジャパン2018に行ってきました。

約780社が出展している半導体産業の展示会。

多くの人が訪れ、活気に満ち溢れていました。

12月13日、14日の2日間、端から端まで、ブースを歩き回り、興味の惹かれるブースに立ち寄りあれやこれや質問させていただきました。

このような展示会に行くのは初めてのことで、すべてが刺激的でした。

出展している企業によって、ブースの活気や人だかりの差が激しかったです。

私が個人的に、特に、気合入ってる!すごい!と感じたブースは、

ミニマルファブディスココネクテックジャパンでした。

ミニマルファブブースは、ミニマルファブ装置が立ち並びセミナーや、スタンプラリーなどのイベントが多く開催されていました。沢山のスタッフの方がいて、どの方も質問をすると丁寧にいろいろと教えてくださったり、実際に内部の装置がどのようになっているかデモンストレーションも見ることができました。

大手の装置会社は、ほとんどパネル展示のみで、その場が商談といった雰囲気で営業マンらしき方々が立ち並び、わたしのようなメーカーとは全く関係のない人間にはネームプレートを一瞥するだけで声も掛けてもらえないといった状況が多い中、ディスコさんは、ダイシング装置などをガンガンとならべ、ブース前でセミナーなども開催されており、とても活気がありました。

また、新潟県妙高市のコネクテックジャパンさんは、装置と共に、社員の方自らが作成した技術を紹介するパネルが展示されていて、ホームページを拡大コピーしたようなパネル展示とは異なり、非常に分かりやすく力強いパネルでした。また、どの社員の方も気さくに話かけてくださりあれこれ説明してくれました。社長さん自らもブースにいて、写真もガンガン撮っていいからねー。と超オープンな情報開示をされていました。技術を多くの人に知って欲しいという熱意にあふれていました。

 

私が感動を受けた、この活気があり盛り上がっていたブースの中で、本日は、ミニマルファブについて、聞いてきたこと、感じたことを、特許を織り交ぜてお伝えしたいと思います。

ミニマルファブとは

ミニマルファブは、従来の大型の装置を使う大規模な工場が必要な半導体製造工場、通称メガファブとは異なり、小型の装置で、小さなスペースでも工場ラインを作ることを可能にしたシステム。

小型の装置、ミニマル装置は、高さ:1m44cm、幅:29.4cm、奥行き:45cmと小柄な女性くらいのサイズです。

ミニマル装置は外観は同じでも、中身は、ウェハ表面処理装置、露光装置、エッチング装置、イオン注入装置と、半導体装置を製造するための装置が搭載されています。

このミニマル装置を必要な種類と必要な数だけ揃えることで、様々な要望に沿った半導体工場を作ることが可能。

また、ウェハサイズも、メガファブで扱うような12インチ(約30cm)といった大きいものではなく、0.5インチサイズ(約1.5cm)と指先程の大きさです。

ミニマルファブはメガファブと比べると、初期投資金額、スペースをかなり削減することが可能となります。

また、これまで、メガファブでは、パソコンやスマートフォンといった大量に生産される製品の半導体装置を対象に生産されてきました。

ただ、産業機器、輸送機器など、少量でも需要のある製品に対しては、例えば年間1万個しかいらない製品に対しても、メガファブに注文をすると、受注最小個数は100万個という大きな単位での注文しかできず、無駄なコストが発生するといった問題があります。

また、例えば、新しい製品を考案してプロトタイプを作るといった場合も、大きな工場を止めて、プロトタイプ用に装置の調整が必要で、時間もお金も莫大なものになっていました。

このような多量でなければ割が合わない製造単位や、プロトタイプ製品の製造など少量で製造したいといったニーズに答えることがミニマルファブでは可能になり得るのです。

小規模で自分の考えた製品を試しに作れるとなれば、新しい技術が生み出されるチャンスが無数に増えるということですよね。

あと、大学などの研究室でもミニマル装置を使いたいという声が多いようです。

ミニマルファブが大学などで使えることができれば、半導体製造の工程や仕組みが、教科書だけではなく実際に見て触れる、体験をもって学習できる場が広がれば、将来的の優秀な技術者を沢山生み出すことも可能になりますね。

そう考えるとミニマルファブはただの小さな装置ではなく、これからの将来に多様な応用性がありますね。

ミニマルファブの歴史

セミコンジャパン2018中に開催されたセミナーでミニマルファブの簡単な歴史を紹介されていたので引用とまとめをさせていただきました。

ミニマルファブ構想は既に8年前には発表されていて、2年前には横河ソリューションサービスさんにて実際にミニマル装置に触ることができるアプリケーションラボが設置され、2017年には、2012年に設立された技術研究組合を積極的解散して、ミニマルファブを市場へ広める活動が各企業で行われているそうです。

また、ミニマルファブ構想の進捗としては、既存の大型装置とミニマル装置の両方を使うハイブリット形式で製品を製造が可能で、フルミニマルファブでは、SOICMOSのプロトタイプを5日間で作製、実用レベルのMEMSのプロトタイプの作製に成功されたそうです。
-セミナー:横河のマーケティング戦略とビジネスモデルより

標準化の理由

ミニマルファブブースでスタッフの方とお話させていただいた中で、一番、あーなるほどと思ったのが、

ミニマル装置の大きさを決めて標準化することを先に行って、その標準化した装置に合わせて従来ある技術をどう納めるかといった発想で技術開発されているということ。

枠をこの大きさで決めていきましょう!では、あなたの持っている強みや、武器をなんとかこの箱に収めて作ってみましょう。と、決められたものに合わせて試行錯誤して物を作り出す。「日本人らしい発想と、日本人が得意とすること」という印象を受けました。

標準化する理由として

  • 類似品を他国に作らても、規格が違えば、これはミニマル装置じゃないと一目瞭然で分かる
  • 規格を同じにすることで製造ラインが容易に構築できる

などの理由があげられるそうです。

【特許番号】特許第6434050号(P6434050)
【発明の名称】前工程-後工程一体化システム
【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所

【課題を解決するための手段】
【0008】
このように構成された本発明によれば、第1搬出入機構にて半導体チップ製造装置内へウェハを搬出入するための第1搬送容器の第1容器本体と、第1搬出入機構に等しい構成の第2搬出入機構にて半導体パッケージ装置内へ半導体チップおよび基板を搬送するための第2搬送容器の第2容器本体とを等しい形状としている。このため、半導体チップ製造装置にてウェハ上に半導体を製造した半導体チップを第2搬送容器に収容させることにより、この第2搬送容器を介して第2搬出入機構にて半導体パッケージ装置内へ搬出入することができる。よって、ウェハ上に半導体を製造してからパッケージするまでの一連の工程の連携を容易に行うことが可能となる。

標準化の代表、ミニマルシャトルとPALD(局所クリーン化前室ルーム)

先にも触れましたが、 ミニマル装置の中の処理室は、ウェハ表面処理装置、露光装置、エッチング装置、イオン注入装置と異なりますが、装置の外観、大きさ、色は標準化(共通して使える)されています。

装置の外観以外に他にも共通して作られている代表としては

  • ミニマルシャトル(ウェハが収納されているケース)
  • PLAD(Particle Lock Air-right Docking:局所クリーン化前室ルーム)

があります。

ウェハが収納されているミニマルシャトルが装置に取り付けられ、PLADという前室でミニマルシャトルからウェハを取り出し処理室へウェハを送る機能が設置されています。

このミニマルシャトルと、PALDに設置されているウェハの搬送装置について、実際にどのような仕組みになっているのか特許明細書を読んでみました。

ミニマルシャトル

ミニマルシャトルはウェハが収納される専用ケースです。ウェハを搬送するために使用されます。

ウェハは、ハーフインチ。そのハーフインチサイズのウェハが入るミニマルシャトルも手のひらに収まるミニマルサイズ。

ウェハステージにウェハが設置され、ウェハドームとウェハステージが嵌りあうことで密封されます。

特許第6061269号
特許権者: 国立研究開発法人産業技術総合研究所(東京都)
搬送容器の開閉装置

どのように密封しているかというと、磁力、磁石の力で密封しています。

また、ミニマルシャトルを開ける際も磁力で開ける仕組みとなっています。

特許明細書の図をお借りして説明すると、

ウェハドーム、ウェハステージにはそれぞれ磁石と磁性体(緑色の斜線部)が設置されていて、磁力でケースが密封されています。

ミニマルシャトルを装置に設置して、装置内にウェハステージのみを引き込む際は、ウェハドームの磁性体より強い磁力を持つ装置側の電磁石(黄色の斜線部)によって、ウェハステージの磁性体が引き寄せられて、ウェハドームとウェハステージが離れる仕組みとなっています。

磁気を使用することによって、機械的な機構を開閉に利用しないことから微粒子の発生を抑えることが、特許明細書の記述から伺えます。

【0034】
容器扉は、装置扉に具備される扉のフック機構等によって開閉される。本発明においては、微粒子もガス分子もその発生を抑制する機構として磁気フック機構を用いる。一般的に用いられる摺動する部分が沢山ある機械的な鍵の機構では、開閉時に発生する摺動によって、多量の微粒子が発生する。従って、高度な清浄化が要求される場合に用いるべきではない。磁気を用いる開閉機構は、そのような機械的動作を伴わず、摺動が発生しないので、微粒子の発生量が格段に少なく、高度な清浄化に適している。

いかに、汚染物を少なく、ミニマル化にするかの技術が小さなミニマルシャトルに詰め込まれていますね。

PLAD(Particle Lock Air-right Docking:局所クローン化前室ルーム)

次に、PALD(Particle Lock Air-right Docking:局所クローン化前室ルーム)は、ミニマルシャトルからウェハを受け取って処理室へ運ぶ機構が設置されています。

処理室とPLADは区切られています。思い出してください、ミニマル装置は、高さ:1m44cm、幅:29.4cm、奥行き:45cmと小さな装置です。

さらにそのミニマル装置のなかのPLADです。もっと小スペースです。

この中に、ウェハを運び入れ、処理室にそのウェハを運び込む。

このPLADにもミニマルにする匠の技が積み込まれています。

特許第6145658号
特許権者: 国立研究開発法人産業技術総合研究所(東京都)
前室局所クリーン化搬送機構

PLAD内は、上部がクリーン化室下部が駆動室の2室に分離されています。

ウェハを搬送する装置が、2室に渡って設置されていますが、実際にウェハを受け渡しする部分のみクリーン化室にあり、その装置を駆動するモータなどは下部の駆動室に設置され、

クリーン化室を駆動装置などから発生する微粒子から守るような設計になっています。

ミニマルシャトルからウェハを受け取り、PLAD内を上下するエレベータも、ウェハ受け取り部はクリーン化室(上部)、エレベータに上下運動をさせるモータは駆動室(下部)に設置されています。

 

ミニマルシャトルが装置に設置されると、エレベータが上昇して、ウェハドームとウェハステージをを分離し、ウェハステージのみを下降させます。

ウェハドームとウェハステージの分離には先にも触れましたが、エレベータに取り付けられた電磁石によりウェハステージの磁性体を引き付けます。

つぎにエクステンダという機構で、ミニマルシャトルからエレベータによって下降してきたウェハステージから、ウェハだけを受け取って、処理室へ運びこまれます。

エクステンダはセミコンジャパンの会場でも動作している様をみることができたのですが、

アイスキャンディのバーのような平らで細い薄い板が重なり合っていて、その薄い板が一つづつ前に延びていくような動作をしていました。

ウェハがクリーン化室に入ってくるまでの待機状態では小さく折りたたまれていて省スペース

出動となればググーっと前に延びて役目を果たすエクステンダの動きに感動してしまいました。

エクステンダも駆動部分は駆動室に設置され、クリーン化室と分離されています。

さらにエクステンダの一番先、ウェハが乗る部分には、孔(穴)が開いていて、その孔から管を通して真空吸着することで、ウェハが先端部分に留まるような仕組みになっています。

エクステンダに乗ったウェハは、処理室内のウェハ載置台へ送り届けられます。

ウェハ載置台への受け渡しの際には、ウェハを吸着していた真空吸着が止められて、ウェハの受け渡しが行われます。

このように、PLADもまた、限られたスペースの中で、ウェハを受け取り搬送する一連の動きに中で、細部にまでいろいろな技術が盛り込まれています。

また、ミニマルシャトルやPLADを標準化することで、 あとは、処理室に合わせて半導体装置を製造する各装置を開発していくこととなり、コストの低減につながります。

まとめ

ということで、本日は、セミコンジャパンで感動を受けたミニマルファブについて、ミニマル装置の標準化について焦点をあてて、ミニマルシャトルとPLADに関する特許明細書の内容をまとめてみました。

ミニマル装置を標準化することにより、ミニマルスペース、ミニマルコスト、ただ広がる可能性は無限大。それがミニマルファブの魅力なのではと強く感じます。

ミニマルファブの魅力を感じてる人はわたしだけではなく、セミコンジャパンの会場内でもミニマルファブブースは常に人だかりがでてきていました。多くの人がミニマルファブに夢や希望を感じいているのではないかと思います。

この未来に大きな可能性を運ぶミニマルファブを微力ながら応援していきたいです。

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