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自動車はどうして曲がるのか?~デファレンシャル:差動装置~

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日常で、自分で自動車を運転したり、あるいは他人が運転している自動車に乗せてもらったり、またはバスなどの公共機関を利用する方もいらっしゃると思いますが、何気なく利用している「自動車」は、どのような仕組みで動いているのでしょうか?

まず、自動車には大きく「走る」「止まる」「曲がる」といった要素があります。

「走る」場合は、トランスミッションのギヤを入れて、アクセルを踏むことで前進します。

「止まる」場合は、ブレーキペダルを踏むことで、車輪についているブレーキ装置が作動し、車輪の回転を止めて、自動車が止まります。

「曲がる」場合は、ハンドルを、左右どちらかに切ることで、タイヤが右、左を向いて、カーブを曲がったり、十字路を曲がったりします。

当記事では、この自動車の要素のうち、「曲がる」に焦点をあて、「曲がる」ために必要な装置について見ていきます。

なぜ自動車は曲がるのか?

車を運転している人なら、ハンドルを切れば自動車を自分の思っている方向へ曲がることは、当たり前のようにできてしまうので、あまり疑問に思うこともないかもしれませんが、

一本の軸で繋がっている左右のタイヤが同じように回っているのに、カーブを曲がる時も左右のタイヤが同じように回っていたら車体は果たして、単にハンドル操作だけで曲がるのでしょうか?

試しに、自動車の模型を使ってためしてみました。使用したのはVW社のゴルフの模型です。

模型の裏面の写真で、左右のタイヤを繋ぐ軸部分が隠れていて見えないので申し訳ないのですが、片方のタイヤを回すともう片方のタイヤも同じように回ります。

模型を押すと直進します。

この模型を人差し指で押して直進させながら、親指で車体を右から左の方向へ押して右カーブさせようと試みました。

が、直進するのみで、右に曲がりません。

はてさて、実際の自動車はなぜカーブやコーナーを曲がることができるのでしょうか?

実は、自動車にはデファレンシャルという差動装置(さどうそうち)という機構がついていて、このデファレンシャルが左右のタイヤに異なる回転を送ることで、スムーズなコーナリングを実現しています。

では、このデファレンシャル(差動装置)はどのような役目があり、どのような仕組みになっているのでしょうか?

デファレンシャルの役目

自動車が右へ曲がることを想定します。

内側となる右側の車輪より外側の車輪の方が長い軌道が必要となります。

言い換えると、左側の車輪は右側より回転する回数が多くなければなりません。

もし、車輪が左右同じ回転数を保ったまま、コーナーを曲がろうとすると、どちらかのタイヤが空転したり、滑ったりしてスムーズにコーナリングができません。また、なるべく空転を少なくしてコーナーリングをしようとすると、とても大きな弧を描くことになります。

そこで、右車輪と左車輪を異なる回転数にする、例えば上の図のように右に曲がりたい場合、左の車輪の回転数を多くして、右側の車輪の回転を少なくするような、されぞれの車輪を異なる回転数にするのが、デファレンシャルの役目です。

デファレンシャルの構造としくみ

デファレンシャルの構造は、ギザギザの歯を持った、ドライブピニオンギヤ、リングギヤ、ピニオンギヤ、サイドギヤという複数のギヤ(歯車)が組み合わさっています。

エンジンから出力される動力をプロペラシャフトという回転する軸からデファレンシャルに伝達され、デファレンシャルの複数のギヤの組み合わせにより、伝達された動力(回転)を、コーナリング時に左右の車輪に異なる回転数で伝達します。

原理と動作については、以下の動画が大変わかりやすく説明されています。

尚、動画のなかでは、ピニオンギヤはスパイダーギヤと呼ばれています。

デファレンシャルが取り付けられている位置

デファレンシャルが実際に取り付けれている位置を下の図で見てみます。

参考 特開2018-123911
デファレンシャルギヤとドライブシャフトとの結合構造及び車両の製造方法
マツダ株式会社

この図を見ると、デファレンシャルは左右の車輪をつなぐドライブシャフトの中央に位置しています。エンジンが自動車の前方にあり、デファレンシャルは自動車の後方にあります。

先のデファレンシャルの構造でも触れましたが、エンジンから出力された動力をプロペラシャフトを介してデファレンシャルに伝達され、最終的に左右の車輪に動力が伝わります。

ところで、自動車は、駆動方式によって分類され、駆動方式によってデファレンシャルが取り付けられる位置が変わってきます。

駆動方式の種類は、FF方式、FR方式、RR方式、4WD(四輪駆動)等があります。

  • FF方式:フロントエンジン・フロントドライブ:エンジンが車両前方に設置され、前輪が駆動。
  • FR方式:フロントエンジン・リアドライブ:エンジンが車両前方に設置され、後輪が駆動。
  • RR方式:リヤエンジン・リヤドライブ:エンジンが車両後方に設置され、後輪が駆動。
  • 4WD:前輪、後輪どちらも駆動。

一般的に、前輪が駆動するFF方式の場合、デファレンシャルは前輪に取り付けられ、FR、RR方式の場合は後輪が駆動するので、上図のように後輪に取り付けられます。また4WD(四輪駆動)の場合は、前後の1つづつ取り付けられ、さらに前輪と後輪の間の内輪差を吸収するために、センターデフが取り付けられている車両もあります。

デファレンシャルの歴史と特許

デファレンシャルは蒸気自動車ではありますが、自動車用に開発され特許が取得されたのは、1827年、およそ190年前。

1827年 フランスの機械技術者で時計職人だったオネシフォール・ペックールが蒸気自動車を製作しこのとき差動歯車を開発しこれで特許を取得した。現代の自動車で使用されている技術である。-Wikipedia

複数の歯車を使用して多方に異なる回転数を生み出す原理は、かなり古くから利用されていて、自動車には必要な装置です。

自動車がひとたび動き出せば、デファレンシャル内部のギヤも常に回転をしていて、車体の振動も受けるので大変負荷がかかる部分で、強度が必要となります。また、複数の歯車が密接にかみ合っているので、かみ合いの正確さが必要になります。

190年前に開発されたデファレンシャルは、現在でも、各自動車メーカーによって、使用されるパーツの強度をはかったり、複数のギヤを正確に組み立てる装置などの開発が進められ改良が計れらています。

デファレンシャルに関連する特許

ダイハツ工業株式会社
特開2017-198238 デファレンシャルギヤケース

この特許ではデファレンシャルのリングギヤが溶接されているケース(デファレンシャルを取り囲む部分)が、リングギヤにかかる応力によってケースとリングギヤの溶接部分が破損する恐れがあるのを、ケースを2つに分けて、ケースの組付け箇所を変えて、リングギヤにかかる応力をケースが受けないような技術です。

また、デファレンシャル装置の組み立てて装置に関する開発もされています。

トヨタ自動車株式会社
特開2016-215301 デファレンシャルギヤ組み付け方法及びデファレンシャルギヤ組み付け装置

アイシン・エィ・ダブリュ株式会社
特開2014-61572 デファレンシャルギヤの組立装置および方法

まとめ

自動車がスムーズにカービングやコーナリングをする、「曲がる」ために必要なデファレンシャル(差動装置)についてまとめてみました。

今回はデファレンシャルがどのようなものかに焦点を当てて説明しましたが、実はこのデファレンシャルには欠点もあり、その欠点をカバーする、デファレンシャルロック、LSDといった機構があります。

が、このデファレンシャルロックと、LSDについては、また別の機会に説明したいと思います。

自動車はどうして曲がるのか?デファレンシャル、差動装置ってどんなもの?と疑問に思った方のためになれば幸いです。

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