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回生ブレーキの課題は電気自動車、ハイブリッドカーの課題

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わたしたちの周りの自動車環境は、燃料を原料とするエンジン自動車から電動自動車やハイブリッドカーに移行しつつあります。

その背景には、深刻なエネルギー問題があります。

自動車の燃料の原料となる石油は、このまま使い続けるとあと約50年くらいで枯渇すると推定されています。

世界の石油確認埋蔵量は2014年末時点で1兆7,001億バレル(オイルサンドを除く)であり、これを2014年の石油生産量で除した可採年数は52.5年となりました。

経済産業省 資源エネルギー庁

各国では将来的にガソリン車、ディーゼル車を販売禁止にする方針が打ち立てられています。

例えば、イギリス政府、フランス政府は2040年までにガソリン車、ディーゼル車の販売を禁止する方針をとっています。

自動車の電動化が求められ、なるべく燃料を節約する、もしくは使わないといった技術が開発されています。

その中で、電気自動車やハイブリッドカーに使用されている「回生ブレーキ」に関する技術を調べてみました。

回生ブレーキとは?

まず、回生ブレーキとは何かを簡単に説明すると、自動車のブレーキ時や減速時に、従来の自動車の場合、ブレーキシステムが作動して自動車のスピードが減速していく過程で、熱エネルギーとして環境に排出されていた摩擦エネルギーを電気エネルギーとして発電し、発電したエネルギーをバッテリーに充電して、バッテリーに充電した電力を車載されている電装品やエンジンの加速に使うといった、捨ててたエネルギーを回収してもう一度使うシステムです。(詳しくはこちらの記事を参考にしてください。

なぜ回生ブレーキが必要なのかというと、

エンジン自動車は燃料をエンジン内で爆発させてそのエネルギーを原動力として駆動力に変換し車輪に伝えて自動車を動かしています。

電気自動車や、ハイブリッドカーではモータの回転力を原動力として駆動力に変えて車輪に伝えて自動車を動かします。

ここで、モータで発電される電力を原動力を使えば、エンジンからの原動力の必要がなくなります。

そこで、従来では捨てられたエネルギーを生き返らせて使うことのできる回生ブレーキが燃料の代わりに原動力となる電力を確保する手段の一つとなります。

したがって、回生ブレーキの課題は単に回生ブレーキのシステムだけの課題ではなく、燃料を節約できる電気自動車、ハイブリッドカーの課題でもあり、有限資源である燃料をどう節約し、何で代替えしていくかといった地球規模の課題ともなります。

そして、回生ブレーキに関するいろいろな課題を改善、改良する特許が各自動車メーカーや部品メーカーから出願されています。

その中で、今回は回生ブレーキにおける「バッテリー要素」に関する課題と技術をとりあげます。

回生ブレーキのメリット

まず、回生ブレーキを使用することで考えられるメリットを3つ挙げます。

  1. 従来ではブレーキ作動時に捨てられていた熱エネルギーを利用して発電し電力を確保できる。
  2. 油圧(摩擦)ブレーキの使用頻度が減る ⇒ 油圧ブレーキの構成部品の耐性が向上する(ブレーキパッドなどの減りが抑制されて交換頻度が減る。)
  3. エンジンの動力の使用頻度が減る ⇒ 燃料を節約できる。

バッテリーに対する課題

次に、回生ブレーキにおけるバッテリー(蓄電装置)に対する課題を大きく2つに分類すると、

  • バッテリーが満充電だと回生電力が充電されず、回生ブレーキの作動に制限がかかる
  • 頻繁にバッテリーの放充電を繰り返すと、バッテリーの劣化に繋がる

などが挙げられます。

バッテリーが満充電だと回生電力が充電されず、回生ブレーキの作動に制限がかかる

上記に挙げたメリットを活かすためにも、回生ブレーキの使用頻度は多い方が良いのですが、ここで問題となるのがバッテリーの充電量。

バッテリーの充電が満充電に近いと、回生ブレーキによって発生する回生電力を充電することができません。

充電ができないと、回生ブレーキが作動しないように制限がかかることになります。

電力の部分ではバッテリーが充電されているので、問題ないのでは?と思うかもしれませんが、

回生ブレーキが使えなければ、代わりに油圧ブレーキを使うことになり、回生ブレーキを使用するメリットに反し摩擦ブレーキの使用頻度が上がってしまいます。

また、補足的なデメリットとして、長い下り坂などで油圧ブレーキを使いすぎると、フェード現象といってブレーキが効かなくなる現象がおきるので、このフェード現象を抑制するためにも油圧ブレーキの代わりに回生ブレーキを使用したいところです。

さらに回生ブレーキの代わりにエンジンブレーキを使うことも考えられますが、燃料を消費することになり、回生ブレーキを使用することで燃費をよくするといったメリットに反することになります。

もう一つ、回生電力のバッテリーへの制限をかけずに満充電のバッテリーに充電し続けると、バッテリーが過充電となりバッテリーの劣化に繋がります。

そこで、バッテリーの満充電を抑制する技術が考案、発明されています。

  • 電力を消費させて、バッテリーの容量を増やして充電できるようにする
  • 2種類のモータ(発電機)を使い、バッテリーの充電状況によって発電するモータを選択する
電力を消費させて、バッテリーの容量を増やして充電できるようにする

特開2002-238105 いすゞ自動車株式会社 ハイブリッド型電気自動車

満充電の蓄電装置に回生電力を充電できない場合に、回生発電しているモータとは別のモータ(発電機)と、排ガス浄化装置に回生電力を供給して電力を消費することによって、回生ブレーキと発電を止めないようにする。バッテリーの充電量が減れば、回生電力をバッテリーへ充電できる。

 

2種類のモータを使い、バッテリの充電状況によって発電するモータを選択する

特開2015-133801 トヨタ自動車株式会社 電動車両

回生効率の高い同期モータジェネレータと、回生効率の低い誘電モータジェネレータの2台のモータを電気車両に搭載。回生制動時の電力を、バッテリーの残容量、ブレーキ制動量などを算出してバッテリーが過充電になって回生ブレーキが解除されないように発電する比率を変える。例えば、バッテリーの残容量が多い場合、回生効率の低い誘電モータジェネレータを使って発電量を少なくしてバッテリーへ充電。逆にバッテリーの残容量が少なければ、回生効率の高い同期モータジェネレータを使用して充電する。

 

頻繁にバッテリーの放充電を繰り返すと、バッテリー劣化に繋がる

バッテリーの劣化を防ぐという課題に対しては、

容量が大きいが充放電のスピードがゆっくりな蓄電装置と、容量が小さいけれど充放電のスピードが速く繰り返される放充電に対して耐性のある蓄電装置の、2種類の異なる蓄電装置を使い、放充電に対して強い蓄電装置へ選択的に充電するといった方法がとられています。

-特開2017-093192 三菱自動車工業株式会社 車両の電源装置

蓄電装置として、バッテリーと充放電に強いキャパシタとを使用し、回生電力のバッテリーとキャパシタへの充電と、バッテリーとキャパシタからのモータへの電力供給(放電)を制御装置を使って、キャパシタが優先的に充放電するように制御する。また、モータから遠くに設置されるバッテリーには、キャパシタよりモータからの距離が遠い分、抵抗がかかりエネルギー損失がおきるが、モータから近いキャパシタを充放電することでエネルギー損失も低減できる。

 

 

今回は回生ブレーキにおける、バッテリーに関する問題のみを取り上げましたが、この他にも、

油圧ブレーキと回生ブレーキの協調制動でいかに回生ブレーキの使用効率をあげるのか、

回生ブレーキと変速機の回転差などによる回生ブレーキ作動時のショックをどう和らげるのか、

といった課題があり、対策となる様々な技術が考案されています。

まとめ

回生ブレーキにおける「バッテリー」に関する課題を取り上げてみました。

なるべくガソリンを使わず、しかも、捨ててしまっていたエネルギーを電気エネルギーに変えて使う回生ブレーキは、エネルギー問題を解決していく一助となり得ます。

もしも、人間がこのまま燃料を使い尽くしていけば、エネルギーを奪い合い、大きな紛争が起きないとも言えません。

そんな世の中にならない為にも、電気自動車やハイブリッドカーに関する技術開発を応援したいものです。

MikesPhotos / Pixabay

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